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カルナバ通信 Vol.4 歌詞に込めた思い④

みなさまおはようございます。カルナバ隊・サトキチです。

暑さがヤバいですね……。各所で作業されている方、本当に熱中症に気をつけて…!

 

エンヘードの解説集中連載、今回が最終回です。

一休みのお供にどうぞ♪

 

◎ざわーにょのエンヘード解説4◎

◎Bメロのテンションの高い複雑なコード進行をくぐり抜けると、

 明るい雰囲気のCメロになります。

 

E,o quatorze-bis

Sobrevoou aos arcos da cidade atual

O sambista sem igual

com a pureza do amor

Com seu "pinho" cantou

o Hino Nacional

 

「そして、14ビス*が(*ブラジル人が初飛行した飛行機の名前)

 現代の都市のアーチの上を飛んだ

比肩する者の居ないサンビスタ、愛の純粋さを持った

彼のギターと共に国家を歌った」

 

Cメロはサンバの代表者、ひいてはブラジル文化を最も体現した人物、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ自身をストレートに称える内容になっています。

舞台は言わずと知れた2016年のリオのオリンピック開会式です。

パウリーニョ・ダ・ヴィオラが今を生きるブラジル文化最大の表現者として国家斉唱を行いました。

"o quatorze-bis"<14ビス>はブラジル人の飛行家、Santos Dumont サントス・ドゥモンが初飛行した飛行機の名前です。

ブラジル人は人類初飛行の名誉に値するのはライト兄弟ではなくサントス・ドゥモンであると主張して

憚ることがありません。この航空の歴史については紙幅を割きませんので興味あれば調べてみてください。

オリンピック開会式の中継では14ビスはCGで表現されますが、オリンピック会場を飛び立ち、

ラパの水道橋を低空飛行で飛び越え、現代のリオの町並みを夜間飛行します。

そしてパウリーニョ・ダ・ヴィオラが自身のギター("pinho"とは松の木のことですが転じてギターを指す言葉です)の弾き語りにより国家斉唱を行うシーンへと繋がります。

 

さて、一つ問いかけをしましょう。

パウリーニョ・ダ・ヴィオラは何をもって「比肩する者の居ないサンビスタ」なのでしょうか??

ヒット曲の多さでしょうか?現代の若手ミュージシャンにこぞってカバーされる、洒脱な音楽性でしょうか?

先輩サンビスタの知られざる作品を世に広めた功績、長年の輝かしいキャリアによるものでしょうか??

ここでは"pureza do amor"「愛の純粋さ」により比肩するものは居ない、としています。

これは言い得て妙なことと言えるかも知れません。

着想はパウリーニョの初期の代表作[Coisas do mundo,minha nega]の中の一節です。

 

--Hoje eu vim, minha nega      今日も来たよ

--Andar contigo no espaço      君とこの空間を歩いてゆく

--Tentar fazer em teus braços  君の腕のなかで

--um samba puro de amor        純粋な愛のサンバを作ろうと試みる

--Sem melodia ou palavra       メロディーと詩句、

--pra não perder o valor       どちらかが無くても価値を失わない

 

結果として"o sambista sem igual"から"o Hino Nacional"へと続く部分は

一方向に進んでいくコード進行と相まって、曲の結びに向かって強力なブリッジを形成しています。

個人的には曲の中で一番気持ちが乗る部分と考えています。

 

最後の部分です。

 

No mundo,do outro lado,esse rio já passou

No mundo inteiro,o rio já passou

「世界の、反対側まで、すでにこの川が流れた

世界中に、すでに川が流れた」

 

結びにはパウリーニョの最大の代表曲"Foi um rio que passou em minha vida"をオマージュした歌詞を配置し、

世界中にパウリーニョの影響で世界にサンバが伝わった様を伝えます。

"Foi um rio que passou em minha vida"は「僕の人生に流れて行った川があった」という意味ですが

エスコーラヂサンバ「ポルテーラ」を川に喩えて自分にとってどんなものであったかを語る、

とても味わい深い歌詞の曲です。まだ良く知らないというかたはぜひ触れてみてください。

 

そして歌は繰り返しのパートに戻っていきます。

O azul e branco traz a mensagem!

Minha viola chama,pede passagem!

(解説終わり)

各パートに熱い思いとオマージュの詰まったエンヘード解説、いかがだったでしょうか?

次回からは、隊列に組み込まれたものたちの解説&衣装進捗レポートをお送りしていきますよ!

制作過程を見ておくと、本番の感動ひとしおです。

お楽しみに!

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コメント: 1
  • #1

    cacao (火曜日, 17 7月 2018 14:16)

    素晴らしい!
    これだけの気持ちがこもった歌なんだと言う事を、観ている人にも伝えたい。
    たとえポル語がわからなくても、サンバの事を知らなくても、「これがバルバロスのメッセージです!」という心意気が伝わるようにパレードしたいと思います。
    この解説を読む前と後では、今年の浅草にかける思いがまるで変わりました。
    忙しい中ありがとう!
    そして矢澤氏、素晴らしい俺たちのサンバエンヘードを作ってくれてありがとう!